[危険物取扱者] 危険物の定義、分類、性質

Hazardous materials / 危険物

ここでは、危険物の定義から、分類、性質、各分類ごとの特徴などを説明します。

危険物の定義

日本においては、消防法により、危険物が定められていて、その貯蔵、取扱い、運搬等について規制されています。

第二条 この法律の用語は左の例による。
⑦ 危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。

消防法 (昭和二十三年法律第百八十六号)

危険物の分類

危険物は、第1類~第6類に分類されていて、その全ては固体か液体の状態のものです。性質名が「物質」となっているものは、固体のものと液体のものが含まれているということになります。
消防法でいう危険物に気体(ガス)は含まれません

分類性質状態特性代表的物質
第1類  酸化性固体固体酸素含有、可燃物・有機物との混合で爆発リスク 塩素酸カリウム、アルカリ金属過酸化物、硝酸塩類、過マンガン酸カリウム、三酸化クロム
第2類  可燃性固体固体酸化され易い、酸化剤との混合で爆発リスク 硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、固形アルコール、ゴムのり、ラッカーパテ
第3類  自然発火性物質及び禁水性物質固体、液体自然発火、禁水性カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、黄りん、リチウム、水酸化ナトリウム、りん化カルシウム、炭化カルシウム
第4類  引火性液体液体水に浮く、蒸気は空気より重い、静電気が発生し易いジエチルエーテル、二硫化炭素、アセトアルデヒド、ガソリン、アセトン、メタノール、灯油、重油、グリセリン
第5類  自己反応性物質固体、液体可燃性固体か液体、多くが酸素を含む、爆発リスク過酸化ベンゾイル、エチルメチルケトンパーオキサイド、硝酸エチル、ニトロセルロール、ピクリン酸、トリニトロトルエン、アジ化ナトリウム、硫酸ヒドロキシルアミン
第6類  酸化性液体液体不燃性、腐食性、刺激性過塩素酸、過酸化水素、硝酸、ハロゲン間化合物

危険物の品名、共通する性状

第1類: 酸化性固体

第1類/品名、主な物質

品名代表物質
塩素酸塩類
塩素酸ナトリウム
塩素酸カリウム
塩素酸アンモニウム
塩素酸バリウム
過塩素酸塩類
過塩素酸ナトリウム過塩素酸カリウム過塩素酸アンモニウム
無機過酸化物過酸化ナトリウム
過酸化カリウム
過酸化カルシウム
過酸化マグネシウム
過酸化バリウム
亜塩素酸塩類亜塩素酸ナトリウム
臭素酸塩類臭素酸カリウム
硝酸塩類硝酸ナトリウム硝酸カリウム硝酸アンモニウム
よう素酸塩類ヨウ素酸ナトリウムヨウ素酸カリウム
過マンガン酸塩類過マンガン酸カリウム過マンガン酸ナトリウム
重クロム酸塩類重クロム酸カリウム重クロム酸アンモニウム
その他のもので政令で定めるもの三酸化クロム二酸化鉛次亜塩素酸カルシウム

第1類/代表的な性状

  • 酸素を含有している。
  • 強酸との反応、または、加熱、衝撃、摩擦によって分解される。
  • 分解時には酸素を放出するため、周囲の可燃物の燃焼を促進する。
  • 還元性物質(可燃物、有機物など)と混合すると、加熱、衝撃、摩擦で爆発する危険性がある。
  • 酸化性固体自体は燃焼しない。
  • 比重 > 1
  • “無色の結晶”や”白色粉末”が多い。
  • 水に溶けるものが多い。
  • 潮解性があるものがある。

第1類/貯蔵、取扱い、火災予防

第1類/共通事項
  1. 火気、加熱、衝撃、摩擦は与えない。
  2. 強酸や還元性物質(可燃物、有機物など)との接触を防ぐ。
  3. 容器は密栓し、換気のよい冷暗所に貯蔵する。
第1類/特定の性質があるもの
  • 潮解性があるもの:    湿気を防ぐ。
  • アルカリ金属の過酸化物: 水との接触を防ぐ。

第1類/消火

第1類/基本事項
  1. 分解により酸素が放出、供給されているため、分解を抑制する必要がある。
  2. 分解抑制のため、大量の水で冷却するのが効果的。
第1類/特定の性質があるもの

アルカリ金属過酸化物

  • 初期:   炭酸水素塩類系の粉末消火剤、または、乾燥砂
  • 中期以降: 大量の水を可燃物側へ注水

第2類: 可燃性固体

第2類/品名、主な物質

品名代表物質
硫化りん三硫化りん五硫化りん七硫化りん
赤りん赤りん
硫黄硫黄
鉄粉鉄粉
金属粉アルミニウム粉
亜鉛粉
マグネシウム
引火性固体固形アルコールゴムのりラッカーパテ

第2類/代表的な性状

  • 酸化されやすい物質
  • 酸化剤と混合すると、加熱、衝撃、摩擦で爆発する危険性がある。
  • 比較的低温で着火、または、引火しやすい。
  • 燃焼速度は速い。
  • 比重 > 1 のものが多い。
  • 有毒なもの、燃焼により有毒ガスを発生するものがある。
  • 水に溶けないものが多い。
  • 微粉状のもの: 粉塵爆発を起こしやすい。

第2類/貯蔵、取扱い、火災予防

第2類/共通事項
  1. 酸化剤との接触や混合を防ぐ。
  2. 火気との接触、加熱を避ける。
  3. 密封し防湿する。
  4. 冷暗所に貯蔵する。
第2類/特定の性質があるもの
  • 鉄粉、金属粉、マグネシウム: 水、または、酸との接触を防ぐ。
  • 引火性固体: 蒸気を発生させないようにする。

粉塵爆発リスクがあるもの:

  • 火気を使用しない。
  • 換気により燃焼範囲の下限未満にする。
  • 静電気の蓄積を防止する。
  • 電気設備を防爆にする。
  • 不活性ガスを粉塵取扱い装置に封入する。
  • 粉塵の堆積を防止する。

第2類/消火

第2類/基本事項
  1. なし
第2類/特定の性質があるもの
  • 硫化りん、鉄粉、金属粉、マグネシウム:  乾燥砂など <窒息消火
  • 引火性固体: 泡、二酸化炭素、はご原価物、粉末消火剤 <窒息消火
  • 上記以外(赤りん、硫黄): 水、強化液、泡 <冷却消火
    乾燥砂など <窒息消火

第3類: 自然発火性物質及び禁水性物質

第3類/品名、主な物質

品名代表物質
カリウムカリウム
ナトリウムナトリウム
アルキルアルミニウムトリエチルアルミニウム
アルキルリチウムノルマルブチルリチウム
黄りん黄りん
アルカリ金属 および アルカリ度類金属リチウムカルシウムバリウム
有機金属化合物ジエチル亜鉛
金属の水素化物水素化ナトリウム水素化リチウム
金属のりん化物りん化カルシウム
カルシウムまたは 
アルミニウムの炭化物
炭化カリシウム炭化アルミニウム
その他のもので政令で定めるものトリクロロシラン

第3類/代表的な性状

  • 大部分の第3類物質は、自然発火性と禁水性の両性質を有する
     黄りん: 自然発火性のみ
     リチウム: 禁水性のみ
  • 無機物だけでなく、有機化合物も含まれる。
  • 空気、または、水との接触により危険性が生じる。

第3類/貯蔵、取扱い、火災予防

第3類/共通事項
  1. 火気、加熱、衝撃、摩擦は与えない。
  2. 強酸や還元性物質(可燃物、有機物など)との接触を防ぐ。
  3. 容器は密栓し、換気のよい冷暗所に貯蔵する。
第3類/特定の性質があるもの
  • 潮解性があるもの:    湿気を防ぐ。
  • アルカリ金属の過酸化物: 水との接触を防ぐ。

第3類/消火

第3類/基本事項
  1. 大部分が禁水性のため、水、強化液、泡は使用できない。
  2. 粉末消火剤(炭化水素塩類など)を用いる。
  3. 乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩を用いる。
第3類/特定の性質があるもの

黄りん

  • 水と土砂を使い消火する。

第4類: 引火性液体

第4類/品名、主な物質

品名代表物質
特殊引火物ジエチルエーテル
二硫化炭素
アセトアルデヒド酸化プロピレン
第1石油類ガソリン
ベンゼン
トルエン
n-ヘキサン
酢酸エチル
アセトン
ピリジン
ジエチルアミン
アルコール類メタノール
エタノール
n-プロピルアルコールイソプロピルアルコール
第2石油類灯油
軽油
クロロベンゼン
キシレン
酢酸
第3石油類重油
クレオソート油
アニリン
ニトロベンゼン
グリセリン
第4石油類ギヤー油シリンダー油
植物油類アマニ油ヤシ油

第4類/代表的な性状

  • 発生する可燃性蒸気に引火する危険性がある。
  • 常温でも引火するもの(引火点が常温以下)があり、危険性が高い。
  • 流動時に静電気を発生し易い。
  • 多くは、水溶性がなく、比重が1より小さいため、水に浮く。
  • 水に浮くものは不良導体であるため静電気を蓄積しやすく、放電火花の発生リスクがある。
  • 可燃性蒸気は比重が1より大きく、低所に滞留するリスクがある。

第4類/貯蔵、取扱い、火災予防

第4類/共通事項
  1. 火気、火花を近づけない。加熱を防ぐ。
  2. 容器は密栓し、冷暗所に貯蔵する。
  3. 熱膨張を考慮し、若干の空間容量を確保する。
  4. 低所の換気、通風を確保する。
  5. 滞留リスクの高い場所では、防爆型電気設備を使用する。
  6. 可燃性蒸気を屋外排出する際は、拡散により十分に濃度が低下するよう高所に排出する。
  7. 静電気による放電火花で点火しないよう注意する。
    1. 流動させる際は、流速を遅くする。
    2. 導電性材料を使用する。
    3. 湿度を上げる。
    4. 接地(アース)する。
    5. 作業服には木綿性を使用する。

第4類/消火

第4類/基本事項

効果的な窒息消火、または、抑制消火となる。

  1. 霧状放射による強化液 <抑制消火>
  2. 泡消火剤 <窒息消火>
  3. 二酸化炭素 <窒息消火>
  4. ハロゲン化物 <抑制消火> <窒息消火>
  5. 粉末消火剤 <抑制消火> <窒息消火>
第4類/特定の性質があるもの
  • 非水溶性、比重<1のもの: 水消火、強化液の棒状放射を避ける。
  • 水溶性: 水溶性液体用泡消火剤を使用する。

第5類: 自己反応性物質

第5類/品名、主な物質

品名代表物質
有機過酸化物過酸化ベンゾイル過酢酸エチルメチルケトンパーオキサイド
硝酸エステル類硝酸メチル
硝酸エチル
ニトログリセリンニトロセルロース
ニトロ化合物ピクリン酸トリニトロトルエン
ニトロソ化合物ジニトロソペンタメチレンテトラミン
アゾ化合物アゾビスイソブチロニトリル
ジアゾ化合物ジアゾジニトロフェノール
ヒドラジンの誘導体硫酸ヒドラジン
ヒドロキシルアミンヒドロキシルアミン
ヒドロキシルアミン塩類硫酸ヒドロキシルアミン塩酸ヒドロキシルアミン
その他のもので政令で定めるものアジ化ナトリウム硝酸グアニジン

第5類/代表的な性状

  • 自己反応性を持ち、内部燃焼を起こしやすい。
  • 可燃性の固体か、液体かである。
  • 有機の窒素化合物が多く、いずれも窒素や酸素を含有している。
  • 加熱、衝撃、摩擦で着火、爆発するものが多い。
  • 比重 > 1
  • 引火性のものがある。
  • 空気中で自然分解が進み、自然発火するものがある。
  • 可燃物、金属粉等の混入で、着火、爆発の危険性がある。
  • 燃焼速度が極めて速い。
  • 水とは反応しない。

第5類/貯蔵、取扱い、火災予防

第5類/共通事項
  1. 加熱、衝撃、摩擦は与えない。
  2. 一部を除き容器は密栓し、換気のよい冷暗所に貯蔵する。
  3. 最低限の量だけ置き、廃棄も小分けに行う。
第5類/特定の性質があるもの
  • 密栓すると分解促進するもの: 密栓せず通気性を持たせる。
  • 分解しやすいもの: 室温、湿気、通風に注意する。
  • 乾燥すると爆発リスクが増すもの: 乾燥させない。

第5類/消火

第5類/基本事項
  1. 可燃物と酸素供給体があるため、外部の酸素供給遮断は効果がない。さらに、燃焼速度が非常に速いこともあり、消化が困難。
  2. 大量の水や泡消火剤を使い、冷却し、分解温度未満にするのが効果的。
    • 水(棒状、霧状)
    • 強化液(棒状、霧状)
    • 泡消火剤

第6類: 酸化性液体

第6類/品名、主な物質

品名代表物質
過塩素酸過塩素酸
過酸化水素過酸化水素
硝酸硝酸発煙硝酸
その他のもので政令で定めるもの三ふっ化臭素五ふっ化臭素五ふっ化よう素

第6類/代表的な性状

  • いずれも無機化合物で、不燃性の液体である。
  • 可燃物、有機物との混合で着火させることがある。
  • 比重 > 1
  • 腐食性があり、皮膚や粘膜を侵す。
  • ほとんどの物質に刺激臭がある。
  • 蒸気が有毒なものも多い。
  • 分解して有毒ガスを発生するものが多い。
  • ハロゲン間化合物: 水と激しく反応し、発熱する。

第6類/貯蔵、取扱い、火災予防

第6類/共通事項
  1. 可燃物、有機物、還元剤との接触を避ける。
  2. 耐酸性容器に貯蔵する。
  3. 火気、直射日光は避け、通風のよいところで取り扱う。
  4. 適切な保護具を着用し、取り扱う。
  5. 密栓して保存する。(過酸化水素を除く。)
第6類/特定の性質があるもの
  • 過酸化水素: 分解で酸素が生じるため、密栓しない。
  • ハロゲン間化合物: 水との接触を避ける。

第6類/消火

第6類/基本事項

ハロゲン間化合物以外:

  • 水、泡系消火剤
  • りん酸塩類の粉末消火剤
  • 乾燥砂、膨張真珠岩等

ハロゲン間化合物:

  • りん酸塩類の粉末消火剤
  • 乾燥砂、膨張真珠岩等

2次的災害防止のための消火時注意事項:

  • 水使用の際、危険物が飛散しないようにする。
  • 流出した場合、乾燥砂を使用し、中和剤を用いて中和する。
  • 作業は風上で行い、ガス吸引防護のマスクを着用する。
  • 皮膚を保護する。
この記事を書いた人
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機械系エンジニアのDaigoroです。旧帝大院卒・30代後半・某企業にてエンジニアとして新規開発を担当しています。開発、設計、製造・生産技術・工務の経験があり、学んできたことを整理のためにもまとめています。

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